キャリアの働き
2成分系現像剤において使用される「電子写真用キャリア」は、感光ドラム上にトナー像を形成するための磁性を持った物質です。
キャリアは現像剤が充填されている現像ボックス内において、トナー粒子と共に撹拌されることでトナー粒子に所望の電荷を付与します。
キャリアとトナーはマグネットロール上に磁気ブラシを形成し、電荷を帯びたトナー粒子を感光ドラムの表面に搬送します。
マグネットロール上に残ったキャリア粒子は再び現像ボックス内に戻り、新たなトナー粒子と混合・撹拌され、一定期間繰り返して使用されます。
電子写真用キャリアは、トナー粒子を感光ドラム上へ移行させる（運ぶ）役割を果たしており、そのため「キャリア」と呼ばれています。感光ドラムの表面に搬送されたトナー粒子は、紙の上に転写され、定着器を通過する際に、熱、圧力等によって紙に溶融定着されます。
電子写真システム
2成分現像方式の概略図
キャリアの構成
キャリアの材料としては、平均粒径が50～150㎛のスチール系扁平鉄粉に始まり、塊状から球形のスポンジ鉄粉やアトマイズ鉄粉が用いられてきました。現在は高画質化、高耐久化、高信頼性といった市場の要求に応えるため、平均粒径が20～50㎛のフェライト粉（コア材）の表面に有機樹脂を被覆した「樹脂被覆フェライトキャリア」が主流となっています。
2成分系現像剤において、画像品質を示す多くの画像特性（画像濃度、解像度、階調性等）を安定的に維持するためには、電子写真用キャリアの特性が安定している必要があります。
具体的には初期の段階から所定の値を示すこと、また、耐刷時、及び外部環境の変化においても、安定に維持されることが重要です。
コア材
フェライト粉の組成としては、従来はCu－Zn（銅－亜鉛）フェライトが主に用いられてきましたが、環境負荷低減に対する市場の要求に応えるべく、重金属を含まない環境に優しいEFフェライト（EF：Environmentally Friendly）が開発・上市され、現在ではEFフェライトキャリアが主流となっています。
コア材は、磁気ブラシの形成に寄与する「磁力」やトナー運搬に寄与する「比表面積」が重要な特性となります。
樹脂被覆
コア材の表面に被覆する有機樹脂は求められる機能や目標特性によって、さまざまな樹脂が選択されます。
代表的な樹脂はシリコーン系樹脂、アクリル系樹脂です。
近年では、これらベースとなる樹脂に様々な材料が添加され使用されています。
添加剤は、重要特性である「電気抵抗」や「帯電性」の調整だけでなく、コア材とベース樹脂の密着性向上、ベース樹脂の耐摩耗性の向上、環境変動に伴う現像剤特性の変動抑制といった目的で使用されています。
樹脂被覆フェライトキャリア
（左：電子顕微鏡写真 右：模式図）
キャリアの種類
当社の電子写真用キャリアの主な種類と特性を表に示します。
コア材
さまざまな組成のフェライトコアがあります。
EF系（Mn-Mg-Sr-Fe）は、飽和磁化を表に記載の範囲で任意に調整することが可能です。
また、コア材の表面性状も、下図のようにwrinkleからsmoothまで調整することが可能です。
電子写真現像剤用キャリア
フェライトコア材
| 分類 | 飽和磁化 | 平均粒径 | ||
|---|---|---|---|---|
| 系統 | 組成 | タイプ | (A㎡/kg) | (㎛) |
| Ｆ系 | Cu-Zn-Fe | ソフトフェライト | 60～70 | 50～80 |
| ＥＦ系 | Mn-Mg-Sr-Fe | ソフトフェライト | 50～75 | 20～100 |
| Mn-Mg-Zr-Fe | ソフトフェライト | 65～85 | 20～100 | |
| ＭＦ系 | Mn-Fe | ソフトフェライト | 90～97 | 50～100 |
フェライトコア材の
表面性変更（例）
樹脂被膜
樹脂被覆の種類は主としてシリコーン系、アクリル系、フッ素系の３種類がございます。
ご希望に合わせて、被覆量の調整、各種添加剤（帯電制御剤、導電性制御剤、密着向上剤等）の使用が可能です。
電子写真用キャリアの製品特性（例）
表内の銘柄は「代表例」であり、お客様の目的に応じて、下記の特性や仕様をそれぞれ選択し組み合わせることによって、様々な特性を持った電子写真用キャリアをご提供できます。
- フェライトコアの組成
- フェライトコアの平均粒径
- 樹脂被覆の要不要
- 樹脂被覆材の種類
各材料の長短所、特性の詳細等、ご不明な点等ございましたら、こちらまでお問い合わせください。
電子写真用キャリアの製品特性（例）
| 銘柄 | 組成 | 形状 | 樹脂被覆 | 飽和磁化 (Am2/kg) |
平均粒径 (㎛) |
見掛密度 (g/cm3) |
|
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 有無 | 種類 | ||||||
| F-50 | Cu-Zn-Fe | 球状 | 無 | - | 60～70 | 50 | 2.3～2.7 |
| EF-60 | Mn-Mg-Sr-Fe | 球状 | 無 | - | 50～75 | 60 | 2.3～2.6 |
| EF-50 | 50 | 2.2～2.5 | |||||
| EF-35 | 35 | 2.0～2.4 | |||||
| EF96 | 有 | シリコーン系 | 35 | 2.0～2.4 | |||
| EF46 | アクリル系 | 35 | 2.1～2.5 | ||||
| EF83 | 35 | 2.1～2.5 | |||||
| MF-80 | Mn-Fe | 球状 | 無 | - | 90～97 | 80 | 2.4～2.7 |
| MF-60 | 60 | 2.4～2.7 | |||||
＊上記の値は代表値であり、規格値ではありません。
電子写真用樹脂被覆
フェライトキャリアの
電子顕微鏡写真（例）
各材料の長短所、特性の詳細等、ご不明な点等ございましたら、こちらまでお問い合わせください。